
今、子どもたちの教育の方向性が変わりつつあります。小学校では2011年4月から、新学習指導要領に沿って授業が行われています。この新しい学習指導要領が重視しているのは「子どもたちの現状を踏まえ、『生きる力』を育むという理念のもと、知識や技能の習得とともに思考力・判断力・表現力などを育成すること」です。このポイントに基づき、各学年・各教科の目標も新たに設定されています。
新学習指導要領では、小学5年生の社会科の授業における目標のひとつとして「我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする」ことが掲げられ、「工業製品がどのように生活を支えているか」「工業生産に従事している人々の工夫や努力」などについて調査することが示されています。
この課題に対し、わかりやすいのが自動車産業です。このため、教科書でも自動車産業は大きく取り上げられており、スバルの自動車づくりについて掲載する教科書もあります。子どもにも身近なクルマという存在を通じて暮らしと工業のかかわりを理解するとともに、自動車生産の仕組みや関連工場・外国とのつながりを知り、働く人々の様子も見学で実際に見ることができます。
これまでもスバルでは、小学5年生の社会科見学として多くの小学校の工場見学を受け入れてきました。また、キャリア教育の支援などにも力を入れ、各事業所で活動を継続してきました。しかし今後は、新学習指導要領の考え方も踏まえ、子どもたちの『生きる力』を育むために、教育を支援していく必要があると考えています。
スバルのクルマづくりを通じて、日本の産業や労働、地球環境とのかかわりなど子どもたちに少しでも多くのことを理解してもらいたい。そして、子どもたちが将来の夢や働くということに対して前向きに進むヒントを提供したい。そんな想いを込めたスバルの取り組みのいくつかを、ここでご紹介します。

「それでは、スバルのクルマづくりについて、まずは映像でご説明します」群馬県太田市、群馬製作所矢島工場内にあるスバルビジターセンター。この日工場見学に訪れた群馬県みなかみ町立古馬牧小学校の5年生は、真剣な表情でアテンド※1の声に耳を傾けています。
スバルビジターセンターを訪れる見学者は年間約10万人のうち、約9割が小学生です。群馬県内はもとより、関東一円からも申し込みがあります。社会的に工場見学がブームになったこともあり、多くの皆さまに足を運んでいただいています。
見学ではまず、映像とスライドを使ってクルマづくりの流れや工場の規模などを伝えます。このあと実際に工場を見学しますが、塗装工程のようにゴミやホコリを嫌うために立ち入りが制限されている場所や、見学ルートから見えないエリアがあるため、その補足の意味も含んでいます。
説明の後に質疑応答をすると『夜中までクルマをつくっているそうですが、働いている人はいつ休んでいるんですか?』『食事はどうしているんですか?』などの質問が出てきます。製造しているクルマのことだけでなく、従業員の「働き方」が子どもたちの興味の対象になっていることが、ここからもわかります。
説明が済むと、ビジターセンター内の展示を見学。歴代のクルマを並べた展示ホールでは、「スバル360」や「スバル1000」などを前に「今のクルマとシートが違うね」「見たことない形のクルマだね」など口々に感想が漏れます。また、ボディを外して内部構造を確認できる模型では、水平対向エンジンやシンメトリカルAWDの動きを見ると歓声が上がりました。映像や教科書でも見ているものですが、実物を前にして初めて実感できる「すごさ」を感じ取っているようです。

展示の見学が終わると、いよいよ工場内の見学ルートへ。高い位置の見学通路から見下ろす工場には、普段の生活では目にしないような大きな機械とともに、各工程でたくさんの従業員が働いています。
「大きな音がする!」「もっと機械ばっかりなのかと思ったら、人がいてびっくりした」「人と機械が協力してクルマをつくっているんだ」「ロボットの腕が、人間の手みたいに細かいところまで作業をしていて驚いた」
工程を一つずつたどりながら、子どもたちは口々に感想を述べていました。目の前で大きな鉄の板がプレス成型や型抜きされたり、それがすばやく運ばれてどんどんクルマのかたちになっていく様は、生で見るからこそ子どもたちの記憶に残るものでしょう。引率の高橋先生・原沢先生は、見学の意義をこう答えてくださいました。
「私たちの学校では、毎年5年生がスバルの工場を見学しています。今回は見学が1学期になってしまい、実際に授業で自動車産業を扱うのが2学期になるので、自分たちの目で見た機械の動きや、人がどのくらいいるかということ、聞いた音をしっかり覚えておいて、授業のときに思い出してほしいですね。クルマの安全についても、どんなふうにチェックしているかなど知ってほしいです」
こうして一連の流れを見学した子どもたちに、最後に感想を聞いてみると、「クルマはいろんな検査を通ってできることを知ってびっくりした」「青いクルマがかっこよかった。将来には電気自動車にも乗ってみたいです」「未来のクルマって空を飛んでいそう。大人になったら私もクルマを運転してみたいな。楽しそうだから」など、クルマを通じてさまざまな価値観や夢を語ってくれました。
自動車工場の見学は、産業を学ぶ学習全体からするとごく一部でしかありません。しかし、教室を飛び出して実際の現場を見ることは、生徒たちの理解促進には大きな力をもつとスバルでは考えており、今後も力を入れて取り組んでいきます。

スバルビジターセンター
2003年7月オープン。工場見学などで矢島工場に来訪されるお客さまに、スバルの歴代の車や個性的な技術、環境への取り組みなどを展示・紹介している施設です。
スバルビジターセンターには年間を通して多くの見学のお客さまがいらっしゃいます。クルマづくりは、部品の製造など関連する産業も含めるととても裾野が広いため、子どもたちが学習するには適切な題材なのではないでしょうか。迫力あるロボットやチームワークで働く従業員を見て、いつまでもお客さまの記憶に残るよう私たちアテンドも積極的に活動していきたいと思っています。将来の仕事について考えるときにもぜひ参考にしていただきたいですね。

スバルではモータースポーツを通じた社会貢献活動を通じて、将来を担う次世代の育成を続けてきました。この活動では、開発者やラリードライバーの実体験を生徒たちに講演で語り、自分の将来像を見据えることや、夢に向かって努力することの大切さを伝えています。2006年からスタートしたこの活動は、小学校だけでなく中・高でも開催しています。
2012年6月、スバルはラリードライバーの新井敏弘氏を、群馬県太田市立生品小学校の特別授業の講師として招きました。これは、新井氏にとっては同小学校での7回目の授業になります。
生品小学校では、6年生で教科を越えた「生き方を学ぶ」という学習テーマを設定しています。世界で活躍するラリー選手の話をきっかけに、自分の将来について自分に問いかけ、真剣に考えることを促したいという想いから、スバルとともにこの特別授業を継続してきました。
授業には6年生の総合的な学習の時間を使います。まず、スバルで研究開発を行う社員が、クルマづくりや環境活動ついて説明します。それから、『生き方から学ぼう、自分にできること』というテーマで新井氏が講演。「夢を追いかけるために必要なこと、またそのために必要なこと」を織り交ぜ、ラリー人生を振り返ってスピーチをしました。
その後校庭に移動し、SUBARU WRXSTIグループR4※2ラリーカーのデモンストレーション走行を行います。土屋修校長に同乗いただき、ラリードライビングテクニックを披露すると、子どもたちは目を輝かせ歓声を浴びせます。いつもの校庭がラリーカーの走る舞台になるのは、生徒たちにとっても非日常的な経験に違いありません。
こうした体験は、子どもたちがスバルのクルマはもちろん、モータースポーツという文化や、地球環境について理解するきっかけにもなります。今後もスバルはこうした取り組みを継続し、将来世代にたくさんの感動と魅力を伝えていきます。


このほかにもスバルでは、従業員が講師として小学校で授業を行う「環境出前授業」を宇都宮市で開催したり、中学生の職場体験を受け入れるなど、教育委員会や学校と連携しながらさまざまな次世代育成・キャリア教育の取り組みを進めています。
こうした活動はすべて、スバルのクルマづくりの最前線で働く従業員の姿を子どもたちに見せ、最新の技術やクルマに直に触れてもらうことで「モノづくり」の素晴らしさを知ってもらい、それを将来を担う「人づくり」につなげたいという想いから続いています。
今後、少子・高齢化の進展し、産業構造や経済が変化する中で、子どもたちが考える将来像も変わっていくと考えられます。その中で、子どもたちが自分で考える力を持って育ってほしいと私たちは願っています。それこそが『生きる力』であり、その力を育むためにクルマを通じてできることを、今後もスバルは続けていきます。


